A01-3
タンパク質寿命の変容と血管狭窄
森戸 大介
昭和大学医学部 講師
https://www.showa-u.ac.jp/education/med/major/biochem.html
researchmap: https://researchmap.jp/7000011224
昭和大学医学部 講師
https://www.showa-u.ac.jp/education/med/major/biochem.html
researchmap: https://researchmap.jp/7000011224
概要
もやもや病は脳血管狭窄を起点とする難治性の脳血管疾患です。もやもや病の発病・進展のメカニズムは未解明ですが、遺伝要因の寄与が大きいことが確かめられています。私たちはもやもや病責任遺伝子の初めての分子クローニングを行い、活性、機能の解明を進めてきました。もやもや病責任遺伝子ミステリン(別名RNF213)には大型の細胞内タンパク質がコードされています。ミステリンタンパク質はダイニン型のATPアーゼカセットと2つのユビキチンリガーゼドメインを持つユニークな酵素でした。それら活性のほとんどは私たちの手によって初めて検出されました。またミステリンがそれら活性を通じて細胞内の脂肪代謝に関わることも分かりました。他方、ミステリンが細胞に感染した細菌を攻撃するはたらきを持つことが近年、海外の幾つかのグループにより報告されています。ミステリンの代謝制御機能と感染防御機能をどのように統一的に説明できるのか、またそれら機能(とその異常)をもやもや病とどのように関連づけられるのか、本領域発足時現在、明らかではありません。私たちはミステリンが種々の生理的・病的条件下において異なるタンパク質サブセットをユビキチン化することを同定しています。その下流では特異的なサブプロテオーム寿命制御が起こっていると考えられます。本研究ではその実態とメカニズムの解明、さらにそれらタンパク質寿命の大規模変容がもやもや病および関連の血管狭窄を導くメカニズムの解明に取り組みます。
- Sugihara M, *Morito D et al. AAA+ ATPase/ ubiquitin ligase mysterin stabilizes cytoplasmic lipid droplets. J Cell Biol 218, 949-960 (2019)
- Kotani Y, *Morito D et al. Alternative exon skipping biases substrate preference of the deubiquitylase USP15 for mysterin/RNF213, the moyamoya disease susceptibility factor. Sci Rep 7, 44293 (2017)
- Kotani Y, *Morito D et al. Neuromuscular regulation in zebrafish by a large AAA+ ATPase/ubiquitin ligase, mysterin/RNF213. Sci Rep 5, 16161(2015)
- Morito D et al. Moyamoya disease-associated protein mysterin/RNF213 is a novel AAA+ ATPase, which dynamically changes its oligomeric state. Sci Rep 4, 4442 (2014)
- Liu W, Morito D (co-first) et al. Identification of RNF213 as a susceptibility gene for moyamoya disease and its possible role in vascular development. PLOS ONE 6, e22542. (2011)
- 森戸大介, 折井みなみ. もやもや病の分子病態をめぐる幾つかの論点. 日本応用酵素協会誌 No.57, 19-26 (2023)
- 森戸大介. ミステリン - もやもや病の責任遺伝子産物. 医学のあゆみ 267 (13), 1105-1110 (2018)