A01
染色体倍数性の異常がもたらす不良タンパク質集団の実態解明と蛋白寿命決定の新原理
川原 裕之
東京都立大学理学研究科 教授
https://www.biol.se.tmu.ac.jp/labo.asp?ID=celche
researchmap: https://researchmap.jp/hkawa/
東京都立大学理学研究科 教授
https://www.biol.se.tmu.ac.jp/labo.asp?ID=celche
researchmap: https://researchmap.jp/hkawa/
概要
新合成されたタンパク質には厳密な品質管理が必要である。最近、このような品質管理の場に、新しいタンパク寿命の決定機構が存在することが明らかになってきた。例えば、小胞体への移行エラーを起こした不良膜タンパク質の分解を誘導するプレエンプティヴ(pre-emptive:予防的)品質管理機構が存在する。我々は、新生ポリペプチドの品質管理を担う新因子としてBAG6を見出し、これがプレエンプティヴ品質管理の中核として機能することを報告した。一方、BAG6が寿命を規定するタンパク質は、これら不良膜タンパク質に留まらない。最近、非翻訳領域の誤翻訳に伴って生じた不良タンパク質、あるいはストップコドンの読み飛ばしに起因する不良タンパク質集団のモデルがBAG6により分解されることが報告された。しかし、これまでの技術では、極度に多様かつ短寿命な細胞内在性不良ポリペプチドームの全体像を同定できる手法が未だ確立されていない。我々はBAG6の基質認識ドメインを応用し、不良ポリペプチドが露出する疎水性を網羅的に捕獲しうる新プローブを開発した。本研究では、このプローブを活用し、細胞内タンパク質構成に変容を引き起こす可能性が浮かび上がっているアニュープロイド(染色体の数的異常)細胞を用いて、これに蓄積するユビキチン化不良翻訳産物のプロファイリングとそれらの寿命決定のメカニズム解明を目指している。
- Miyauchi M., Matsumura R., & Kawahara H. (2023) BAG6 supports stress fiber formation by preventing the ubiquitin-mediated degradation of RhoA. Mol Biol Cell. 10.1091/mbc.E22-08-0355
- Takahashi T., Minami S., Tsuchiya Y., Tajima K., Sakai N., Suga K., Hisanaga S., Ohbayashi N., Fukuda M., & Kawahara H. (2019) Cytoplasmic control of Rab family small GTP ases through BAG 6 . EMBO Rep. 10.15252/embr.201846794
- Suzuki R., & Kawahara H. (2016) UBQLN 4 recognizes mislocalized transmembrane domain proteins and targets these to proteasomal degradation . EMBO Rep. 17, 842–857
- Minami R., Hayakawa A., Kagawa H., Yanagi Y., Yokosawa H., & Kawahara H. (2010) BAG-6 is essential for selective elimination of defective proteasomal substrates. Journal of Cell Biology. 190, 637–650